懲戒処分は就業規則に規定されている内容で

最終更新日 2024年4月2日 by michidoo

1.懲戒処分とは

懲戒処分とは、企業の秩序と規律を維持することが目的で、使用者が従業員の企業秩序違反行為に対して課す制裁罰のことをいいます。
一般的な処分の内容は、戒告・譴責・減給処分・出勤停止・降格・諭旨解雇・懲戒解雇がなされることになるのです。

原則として就業規則に規定されていない懲戒処分を科すことはできないことになっています。
従って必ず就業規則を再度見直して、どのような懲戒処分が規定されているかを確認する必要があるのです。

○戒告・譴責

個別に処分の内容を検討してみますと、それぞれの意味が見えてきます。
まず戒告と譴責は、いずれも労働者に反省を求めて、労働者に将来に向けて戒める処分で最も軽いと位置づけられているのです。

戒告では、口頭での反省が求められるにとどまります。
譴責では、書面による反省が求められ文書での始末書の提出を求められるのが一般的になるのです。

戒告の方が軽いととらえられています。
書面での反省を求める方法としては、始末書の提出を求め自己の非違行為を確認・謝罪して将来同様の行為を行わないことを誓約することを記載させるのがやり方で通常になっているのです。

ところで、懲戒処分を下すかどうかの判断するための前提として、労働者に事実経過や顛末を報告させる形式として「始末書」を提出させることが散見されます。

このような書面を提出させるのは、決定する前に譴責と言う処分が下されたような誤解を招くことになってしまいるのです。
従って、労働者に事実経過や顛末を報告させるための書面の題名は、「顛末書」や「報告書」として提出すべきで「始末書」とは別の形式をとっておくことが重要になります。

○減給処分

減給とは、労働者が本来労務提供に対する対価として受け取るべき賃金から一方的に一定金額を差し引く処分のことを言います。
減給については労働基準法上で以下のような規制があり処分を下す前に確認しておくことが重要になるのです。

規定されているのは、1回(すなわち1件の懲戒事案について)が平均賃金の1日分に対する半額を超えてはならないと決められています。
数件の懲戒事案について減給をする場合、その総額が一賃金支払い期において現実に支払われる賃金の総額の10分の1を超えることはできないとなっているのです。

○出勤停止

出勤停止は、労働契約を継続しつつ、非違行為に対する制裁で一定期間労働者の就労を禁止する処分のことを言います。
出勤停止中は、賃金が支払われず、勤続年数にも通算されないのが一般的になるのです。

出勤停止の上限については法律上の規制はありませんが、実務的には1週間から1ヶ月の間が多くなります。
1ヶ月未満は出勤停止でそれ以上は懲戒休職ないしは停職と区別することがあるのです。

○降格

降格とは、服務規律に違反した労働者に対する制裁で役職・職位・職能資格を引き下げるものです。
「懲戒処分」としての降格の他に「人事上の措置での降格」がありますが就業規則上の根拠が必要になり、懲戒事由に該当していることが最低限必要になります。

懲戒権濫用の有無については裁判所による審査が行われることになっているのです。

○諭旨解雇

諭旨解雇は、懲戒として行われる解雇のことをいい、懲戒の中でも最も重い処分になります。
制裁罰として実施されるので、普通解雇とは区分されることになっているのです。

就業規則上、解雇の予告またはそれに代わる解雇予告手当の支払いをせずに即時に行うと書いてあることが多くなります。
しかしながら、労基署長による除外認定を受けずに、解雇の予告・解雇予告手当の支払いを省略してしまうと労働基準法違反になってしまうので十分配慮のうえ行われることが必要になるのです。

○懲戒解雇

懲戒解雇になった場合には、退職金の全部または一部不支給が伴うことが多くなります。
退職金の全部または一部を不支給とするためには、就業規則及び退職金規定上でその旨を定めておくことが必要になるのです。
また長年の労働の価値を抹消・減殺するほどの違法行為があった場合に限られることが判例では示されています。

2.二重処分の禁止

1回の問題行動に対して2回の処分を行うことはできません。
このルールは「二重処分の禁止」または「一事不再理のルール」と呼ばれています。
すでに処分歴がある労働者に再度処分を科する場合には、依然受けた処分の内容をもう一度見直すことが必要になるのです。

重すぎる懲戒処分は、無効になる可能性があります。
問題行動の内容と比較して重すぎてはなりません。

「相当性のルール」に反することになるからです。
処分の選択を誤り、重すぎる処分をすることは企業にとって重大なリスクとなりうることを良く知っておくべきことになります。

3.弁護士の相談して適切な処分を行うこと

処分を下す前には、法的な問題をクリアしておくことが重要ですから弁護士の相談して適切な処分を行うようにすることが大切になるのです。
問題行動を起こす労働者には懲戒が必要な場合があります。

ただし、人の人生を左右する処分ですから、その根拠はしっかりとしたものである必要があるのです。
このことを忘れて適切な対応をとらないと後で後悔する事態を招くことになります。